蒼述(そうじゅつ)・年越しそば

「私どもの守護神である金屋子神社に参拝したあと、三の間で一族郎党で年越えの挨拶をいたします。いつも一緒にいるのに、と思われるかもしれませんが、親しき仲にも礼儀ありだと思いますね。これも先代がしていたのと同じことを繰り返しているだけです。一年間が無事過ぎたことに感謝し合う行事です。
蒼述(そうじゅつ)は、「来年一年間、病気をしないように」と、火鉢の中にみかんの皮や譲り葉を入れて焦がし、その煙を体にあびせるのです。これもみんな一緒に順番に煙をあびるようにしています。
行事というのはどれが抜けてもなんとなく心地よくないものですね。だから、長い間、少しずつ変化しながらも続いてきたのでしょう。
蒼述も何故、みかんの皮と譲り葉なのかわかりませんが、香ばしくて、煙をあびると大晦日だな、と毎年感慨深く思いますね。
地域によっては大晦日の夜はご馳走で祝うところもありますが、うちは、奥出雲特産の年越しそばで質素ですよ。天然そば粉を昔ながらの作り方で手打ちにし、ねぎや大根おろし、削り節、のりを薬味にしてつゆにつけていただきます。ただ器は、本陣の頃の不昧(ふまい)公好みのそば器があるので、これを使います。大根おろしの汁を入れておく器も付いていて、そばをいただいたあとに飲むと、胃腸にも大層具合よいように思います。
年越しそばをいただいたあとで豆まきをするのもうちの恒例の行事です。私が子どもの頃、父がやっていたので、今も続けていますが、その前から続いていたかどうかは、ちょっと疑問ですが。そんな行事もありますよ」

不昧公の考案されたというそばの器は驚くほどモダンなデザインです。朱と緑、黒と金の漆が彩りよく映え、使いやすく小ぶりです。そばが入る左の器は二階づくりで、上に薬味、下にそばが入ります。そばは二筋に川の流れのように盛りつけ、お椀から少しずつ取り、蓋でいただきます。お椀がからになったら、給仕人が新たにそばを移し入れます。奥の大根の絵の器は大根おろしの絞り汁入れ。みかんの皮と譲り葉を火鉢で燃やし、体に煙をあびせ、健康を析ります。

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