初釜

「出雲松江藩の七代藩主松平治郷(はるさと)は不昧公と呼ばれ、大名茶人として有名です。私どもも代々、茶道は不昧流をたしなんでおります。
うちには、四畳半台目の席で松江有沢山荘にある松平雪川侯作の「向月亭(こうげつてい)」を写した「為楽庵(いらくあん)」と、二畳半台目の席で、京都の大徳寺真珠庵内にある金森宗和作の「庭玉軒(ていぎょくけん)」の写しであり、席名を許された「庭玉軒」の二つの茶室があります。
子どもの頃から私も父のあとについて茶室に自然に入っていましたし、長男の徳康もおじいさん子で三歳くらいから座っていましたよ。茶を点(た)てるということが、ごく身近、生活の一部になっていると思いますね。
元旦の朝の初釜は新年を祝う席。家族揃って、茶を楽しめたら満足です。いつもは道具にはそれほどこだわりませんが、三が日は先祖からの決まった茶碗と棗(なつめ)を揃えます。どれもおめでたい柄で、毎日替わるのですが、年内に蔵から出して茶室にしまっておくのです。
私どもには、松江藩お抱え蒔絵師・初代漆壺斎(しっこさい)や初代勝軍木庵(ぬるであん)の作品が多いのですが、勝軍木庵は晩年、しばしば寄寓したようで、そのために高蒔絵の漆の器が残されたようです」

「為楽庵」で行われる初釜には、十四代、十五代目のご夫妻が揃います。お点前は代々当主あるいは夫人が不昧流をたしなむのが慣わしです。

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