すす掃き

「昔から私のうちでは、十二月四日から正月の準備が始まります。寺から和尚さんを迎え、先祖に感謝する歳満(さいみて)の行事をするのがこの日なのです。以前は、早くから雪も降り始め、この付近は一面銀世界のこともありましたが、近頃はめったに降らなくなりましたね。
さて、いよいよこの行事が終わると暮れも押し詰まった感じで、家中が忙(せわ)しげになります。
そして十三日、松江城の殿様が城内のすす払いをなさったということに由来して、うちのすす掃きもこの日と決まっています。
家中の畳をすべて上げ、梁の上にまでのぼって、掃除してまわるのです。もちろん、蔵も内外ともに清めます。早朝から始めますが、終わるのは夕刻。いつもすっかり日が暮れてしまいますね。
一日働いたすす掃きのあとは、皆で煮菜(にざい)をいただくのが慣例です。鰤やいかなどの海のものと、大根をひいたのを入れた、醤油味の煮ものを肴に、にぎやかな酒宴になります。このときは、男性だけでなく裏方の女性たちも揃って、大鍋にたっぷり作っておいた煮菜が空になるまで続きます」

梁にもはしごをかけ、ねじりぼうきを使って一年の汚れを落とします。蔵の外側の壁も総出で掃除し、長い間白壁を守ってきました。

すす掃きのあとは煮菜の椀が出され、皆の働きがねぎらわれます。

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